古川康佐賀県知事が玄海原発の安全対策説明番組で「やらせ」を九州電力(株)へ指示したとする疑惑の根拠になった九電メモ。その作成者である九州電力の大坪潔晴佐賀支社長の説明は、「主旨・ニュアンスが違う」と否定した古川知事の主張に沿うものであった。
ただし、この"違い"について、大坪氏は「『原発再開を1日でも早く』という思いが入ってしまった」という不可解な理由を述べた。そして説明は、問題の核心とも言えるメモの内容、古川知事のいう"違い"が起きた経緯へと続いていった。
<特段のご指示はなかった>
そのメモ内容といいますか、面談の報告につきましては、6月24日夕刻、副社長から社長に立ち話の状況で数分間、知事への退任あいさつについて報告をいたしております。このときは、知事から特段のご要請を受けたという認識がございませんので、当然、その趣旨の報告は含まれておりませんし、また、発電再開についてのメドも示されなかったということで、その旨の報告をしたということでございます。その際、段上から社長に面談メモは渡していないということでございます。
次に、メモ内容についての説明ということで、私のメモはすでに皆さん方に開示されておりますけれども、そのメモ中、丸ポツが6項目ございましたけれども、本日の招致に関して最も関係があると思われます5つ目の項目、『今後の動きに関して』以下の部分について説明をさせていただきます。
まず(1)のところでございますけれども、知事のほうからは、この前の日に知事からも説明がございましたように、まず県議会の雰囲気としては、選挙を通じて寄せられた地域支援者の不安の声がたいへん大きいと。したがって、県議会の雰囲気もたいへん厳しいという認識を示されました。このようななかでは、自民党の先生方といえども、再起動ありきのスタンスでは必ずしも(理解し)ていただけない。そういう厳しい状況ですよという認識がお話のなかにあったというふうに記憶しております。
先生方の役割というのは、当然のことながら、県民の声にこたえるということでございますので、その県民の声が届くことが一番であるという趣旨はご説明にあったとおりだというふうに認識しております。長く原子力に関わっておられる先生方は必要性などについても安全性とともに大方の説明は理解を伝えていけると思う。しかしながら、福島の大事故の後は、安全性がしっかり確保されているという大前提でなければそういう話もいただけない。そういうことをおっしゃっておりました。
先生方やその支持者たる県民の皆さんへの情報提供なり情報についての説明というものを、九電は事業者であり(当事者)であるから、しっかりとこれまで以上に、理解をいただいた県民の皆さんの声が届くようにする必要があるというようなことで話をされたとその場では私は聞きました。
当社の受け取り方でございますけれども、当社はもともと原子力発電所を設置運営させていただいております。原子力発電所の安定的な運営をしていくためには県民の皆さまのご理解が不可欠ということでありまして、県民の皆さまのご理解なくば、県議会の皆さんのご理解もいただけない。
県議会のご理解なくば、県当局のご判断もありえないという考えから、県議会の先生方をはじめとして、県内の各自治体や県民の皆さま、あるいは県内の各階各層の皆さま方への情報提供やご説明などのいわゆる理解活動をしっかりと取り組んできたつもりでございます。
今回の大震災以降、とくに、緊急安全対策の中味や需給状況について議員の皆さまや県内の企業経営者の方々、あるいは自治体単位、職場単位での勉強会などに積極的に説明をさせていただいておるところでございます。実績で申しますと、大口のお客様への理解活動というのは、282社に対して延べ約650回、オピニオンリーダーの皆さん、職場勉強会、各種団体などへの理解活動というは、約80回、延べ3,000人の人たちに話を聞いていただいております。
したがいまして、知事からのお話も特段のご指示があったというふうに受け取ったわけではございませんで、電気事業者として、議員の皆さんや支持者たる県民の皆さまに、きちっと情報を提供し説明をしていくことがこれまで以上に大切であって、これをしっかりやらなければいけませんねという趣旨のお話があったというふうに私は受け取りまして、この部分をとって、お願いという表現でメモを作成した次第であります。
自分としては、これまでやってきたことを、さらにしっかりとやっていかなければというふうに改めて考えた結果、このようなご意見をメモにしたためたということでございます。本来であれば、知事の発言の趣旨、思いの部分をきちっと書いて、当社としての、あるいは、自分としての思いという部分をはっきり分けて書くべきであったところを、そうしなかったということで誤解を招く結果になったというふうに反省しております」
↑【吉澤 英朗、山下 康太】
※括弧内はNET-IB編集部の補足です。
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